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CARBON CALCULATOR

差し迫った課題

建築環境は今、気候変動への対応における最前線のひとつとなっています。建物は世界全体のエネルギー起源のCO₂排出量の39%を占め、そのうち11%は資材と建設プロセスに由来する「体化炭素」によるものです。英国でも国内排出量の約4分の1が建築環境に起因しているとされており、その影響の大きさは看過できません。さらに、世界では毎週パリに匹敵する規模の都市が新たに建設されているとされ、問題のスケールと緊急性は今なお拡大し続けています。

世界のエネルギーCO₂排出量のうち 建築分野が占める割合

英国における総排出量のうち 建築環境に起因する割合

世界のCO₂排出量のうち 資材および建設に伴う体化炭素の割合

EXPECTATIONS

データに基づく意思決定

AI時代におけるデータの重要性についてはこれまでにも触れてきましたが、その文脈の中で、本年のレポートには体化炭素算定ツール(Embodied Carbon Calculator:ECC)を新たに組み込んでいます。 コスト管理と同じワークフローの中にカーボン評価を組み込むことで、クライアントは、事業性を損なうことなく、ネットゼロ実現に向けた価値ある意思決定を行うことが可能となります。 本ツールは、RICSによる「全ライフサイクル炭素評価に関する声明/Whole Life Carbon Assessment Professional Statement」に準拠して体化炭素を算定しており、設計のあらゆる段階において、一貫性と比較可能性、そして判断への信頼性を担保します。さらに、設計オプションの迅速な評価を可能にするとともに、LETI 2030やUKGBC 2030といった業界目標との明確なベンチマークを提供します。その結果、スケジュール、品質、コストの確実性を維持しながら、炭素削減の機会を早期に特定することが可能となります。

主要な法規制

  • 英国では、2030年までにすべての新築建築物において運用時のネットゼロカーボンが義務化されており、2050年までには既存建物を含め、体化炭素と運用炭素の双方においてネットゼロを達成することが求められています。
  • 欧州連合(EU)では、建築物のエネルギー性能指令(EPBD)が改訂され、2028年以降、延床面積1,000㎡を超える新築建物に対し、ライフサイクル全体の地球温暖化係数(GWP)の算定および報告が義務付けられる予定です。
  • 米国では連邦レベルでの統一目標は設定されていないものの、カリフォルニア州においては、2035年までに新築建物の体化炭素排出量を40%削減する目標が掲げられており、2030年までに20%削減する中間目標が設定されています。

EXPECTATIONS

ロンドン向けECCコスト計画例

本レポートに掲載されているコストデータの基盤となるロンドンのコストプランに対し、エンボディド・カーボン計算ツール(ECC)を直接適用しました。これにより、設計初期の段階から、コストと炭素を一体的に評価する手法を具体的に示しています。 コストプランを構成する各要素を、RICS「Whole Life Carbon Assessment v2」に準拠した検証済みの炭素係数に紐づけることで、プロジェクトの初期段階における体化炭素と、その商業的な側面を並行して把握できる、透明性と監査可能性の高い分析を実現しています。 この統合的なアプローチにより、MEP設備、構造改修、大量使用される資材といった、炭素排出への影響が大きい要素を明確に特定することが可能となります。その結果、前提条件の見直しや低炭素オプションの検討を進めながら、それぞれの選択肢がコストに与える影響を並行して定量評価することができます。 サマリーテーブルに示されている通り、本ロンドンプランに基づく体化炭素(初期段階)は合計825,000kgCO₂eであり、内装面積あたりでは353kgCO₂e/㎡となっています。

低炭素化を推進するため、ECCはコストプランの中から炭素排出量の多い上位10項目および主要資材を自動的に特定します。これにより、設計の中でも特に効果的に炭素削減を実現できる領域を明確に把握し、最適なコストバランスのもとで重点的に検討を進めることが可能となります。 ロンドンのコストプランにおいては、フリーアクセスフロアが最も炭素排出量の大きい項目となっており、対象項目全体の約55%を占めています。一方で、建設コスト全体に占める割合はわずか3%強にとどまっています。 この部分を低炭素仕様の製品へ切り替えることで、約100,000kgCO₂eの削減が可能となり、追加コストはおよそ5ポンド/㎡と比較的限定的です。さらに、リサイクルおよび再認証されたパネルを新規支持脚と組み合わせるといったサーキュラーエコノミーのアプローチを採用することで、同程度のコスト増でさらに約100,000kgCO₂eの削減が見込まれます。

オンラインの資材取引プラットフォームの高度化が進むなか、ロンドンでは資材サプライヤーによる買い取りや再生利用の仕組みも広がり、サーキュラーエコノミーの考え方は着実に浸透しつつあります。適切に計画・実行されることで、内装工事におけるカーボン影響を抑制する有効な手段となり得ます。 下図に示す通り、炭素排出量は要素別に整理されており、コストと同様の枠組みでベンチマークや比較、改善検討を行うことが可能です。こうした中で、内装プロジェクトに対して明確なカーボン目標を設定する企業も増えています。 そのため、コンセプト段階から炭素評価を開始し、標準的なバリューエンジニアリングのプロセスの中で、より効率的な設計への見直しを進めていくことが強く推奨されます。これにより、コスト、品質、スケジュールの最適化を維持しながら、目標達成に向けた最適な価値創出を図ることが可能となります。


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