調査方法
はじめに
本レポートは業界をリードするデータと知見を結集し、世界中でワークプレイスのコストがどのように形成され、構造化され、比較されているかを明らかにするものです。一貫した方法と統一された標準レイアウトに基づく試算手法を活用することで、主要なコスト要素を分解・把握しながら、各プロジェクトや市場、さらには目指す空間の水準に応じた設備投資(CAPEX)計画の策定を可能にします。
本年版では世界58都市を対象に、高・中・低の各仕様レベルにおける建設コストを分析しています。加えて、特に注目する対象を17都市へと拡充し、機能別の詳細な内訳とともに各都市の特性をより深く掘り下げています。これにより、より精緻な計画立案や意思決定を支援します。

コスト算定の前提
本レポートに掲載しているコストは、以下の前提に基づいて算定されています。:
標準レイアウトに基づく試算手法
今年のガイドでは、約4,294㎡・2フロア構成の標準化された試算モデルを引き続き使用しています。このモデルをもとに、CAT AおよびCAT B内装における高・中・低各仕様の建設コストを算定しています。試算に用いたレイアウトの詳細については別途参照いただけますが、その測定およびコスト算出は、当社の各地域におけるコストマネジメントチームが担っています。
ここで入手可能な各仕様レベルは、価格設定の一貫性を確保するため、世界的に標準化た基準を適用しています。「シェル・アンド・コア(Shell and Core)」、「CAT A」、「CAT B」の定義に関する詳細については、こちらをご参照ください。
設計および数量算定の過程においては、本試算モデルを12の機能カテゴリに分解し、それぞれの観点からコストを整理・分析しています。具体的な内訳は右記の通りです。
- 受付/ウェルカムラウンジ
- リフレッシュ/ダイニング/パントリー
- コラボレーションエリア
- IT・通信設備/倉庫/コピー・プリント/ロッカー
- 役員エリア
- 会議室
- 役員会議室(ボードルーム)
- オープンオフィスエリア
- 集中ブース/個室
- 静養・育児対応スペース
- 研修・トレーニング施設
- トイレ(WC)
コストモデルの構造
本レポートのコスト算定は、当社のコストマネジメントチームが作成した機能別コストモデルに基づいています。このモデルは、RICS(英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会)が公表する「新測定規則(New Rules of Measurement)」に準拠して構築されており、以下の構成要素から成立しています。
- 内部階段
- 壁とドア
- 壁仕上げ
- 床材
- 天井仕上げ
- 造作建具および設置機器
- 設備工事
- IT及びセキュリティ
- 仮設費、間接費および利益
北米の都市については、Construction Specifications Institute(CSI)およびConstruction Specifications Canada(CSC)が定める標準的な測定体系である「CSI MasterFormat」に基づき、右記の項目構成でコスト算定を行っています。
- モニュメンタル階段
- 造作工事(ミルワーク)
- 建築用金属・ガラス
- 天井、大工工事、間仕切り、壁面仕上げ
- アクセスフロアと仕上げ
- 設備機器および衛生器具付属品
- 設備工事
- データ・セキュリティ
- 仮設費・設計料・保険
また、発注者側で直接手配される項目については、すべての地域において以下の3つの区分に整理しています。
- 可動式家具
- AV(音響・映像)設備
- 専門家の報酬
これらの前提条件に加え、標準レイアウトに基づく試算手法および設計上の仮定は、対象となる58都市すべてに共有されています。なお、すべての都市が本コストモデルの仕様に完全に準拠しているわけではありませんが、同等の品質水準を有する代替仕様を用いることで、一貫性のある比較とグローバルでの整合性を確保しています。 さらに、各都市から収集したコストデータについては、当社のグローバルベンチマークと照合し、許容範囲内での整合性を確認しています。
仕様レベル別比較
除外事項
- 室内植栽
- 発電設備、大規模トレーディングフロア、データセンター等に関連するMEP(機械・電気・衛生)工事
- スピードゲートなどの特殊なセキュリティ設備
- IT・AV・セキュリティに関連するソフトウェアおよびアプリケーション
- ITネットワーク機器(例:サーバーラック等)
- 移転管理コスト
- 貸主側のロビー・受付エリア
- 垂直搬送設備(例:エレベーター)
- 原状回復費用
- 税金一式
主要用語の定義
為替変動の影響とコスト比較の考え方
概要
今年は当社が事業を展開する複数の市場において、為替レートの変動が例年に比べて著しく大きい状況となりました。こうした変動は、現地通貨で発生したコストを米ドルへ換算する過程において大きな影響を及ぼし、前年比比較において実態の変化を捉えにくくする要因となっています。 こうした背景を踏まえ、本レポートでは2026年版における報告方法を見直し、透明性と比較可能性の向上を図っています。
現地通貨を優先して表示する理由
為替レートが大きく動く局面では、米ドル換算値が実際のコスト動向とは異なる変化を示すことがあります。すなわち、現地通貨ベースでは安定している場合であっても、為替の影響によって増減が生じて見えるという現象です。 本年はまさにそのような状況が顕在化しました: ・為替変動により、米ドルベースの数値に歪みが生じた ・実質的なコスト変化と為替要因を切り分けることが困難となった ・昨年採用していた米ドル単独での報告では、実態を正確に把握しにくくなった こうした課題に対応するため、本レポートではすべてのコストをまず現地通貨で提示し、その後に米ドル換算値を併記する方式へと変更しています。これにより、各市場の実態を為替の影響から切り離して把握することが可能となります。
昨年との違い
前回の報告期間においては、為替レートは比較的安定しており、米ドルベースの表示でも十分な比較精度が確保されていました。しかし、本年のように為替の変動幅が大きい環境において同様の手法を継続した場合、コスト動向の解釈を誤るリスクが高まります。 そのため、本年は報告手法を見直し、より高い精度と透明性、そして意思決定への有用性を重視した形へと改めています。
固定為替レートによる分析
特にグローバルでの比較やランキングにおいて、意味のある前年比分析を可能とするため、本レポートでは「固定為替(コンスタントカレンシー)」の考え方を採用しています。この手法では: ・当年度の現地通貨コストを、前年と同一の為替レートで米ドルに換算する ・為替変動の影響を排除し、実質的なコスト変化のみを可視化する ・これにより、数量の変化や価格動向、運用要因による実質的なコスト変動を明確に捉えることが可能となります。
なお、この手法はグローバル比較に限定して適用されており、地域別のコストデータについては、各時点(2026年)の実勢為替レートを用いて米ドル換算を行っています。これにより、実際のコスト水準を正確に反映しています。