主要トレンド
2026年の世界のオフィス フィットアウト市場における意思決定 の行方
2026年のグローバル内装市場において、テナント企業の意思決定をかたちづくる力は、なお大きく変わりつつあります。その根底にあるのは、急速に変化する企業活動のダイナミズムと、開発という営みが持つ相対的な時間の遅さとのあいだに生じる、いわば構造的な緊張です。
企業は、AIの進展や、オフィスが従業員に提供すべき価値の変化といった複雑な課題に応答しながら、内装戦略を再構築する必要に迫られています。一方で、パンデミック期およびその直後における開発停滞の影響により、グレードAオフィスの供給は現在、ひとつの逼迫局面を迎えています。 こうした供給制約は、多くの市場において選択肢そのものを制限する要因となっており、テナント企業には、自らの意思決定の前提をあらためて見直すことが求められています。

世界各地域において、金融やテクノロジー分野を中心に人材獲得競争が激化するなか、企業はこれまで以上に高品質な内装への投資を強めています。その結果、仕様ごとのコスト差は一段と拡大しています。 平均的に見ても、低仕様から中仕様へは約27%の上昇、さらに高仕様へは約31%の上昇が見られ、グローバルトップ10都市では高仕様内装の平均コストが1㎡あたり5,000米ドルを超えています。
この品質重視の流れは一部の要素にとどまるものではありません。素材のグレードから空間設計の思想に至るまで、商業空間は単なる機能の集合ではなく、体験価値を提供する場へと再定義されつつあります。共用設備・サービスや従業員のウェルビーイングは、その中心的な要素として位置づけられています。
一方で、この潮流は低仕様の内装にも影響を及ぼしています。リモートワークの選択肢が広がるなか、オフィスは自宅環境と比較される存在となり、最低限満たすべき品質水準そのものが引き上げられています。一部の企業では、オフィスそのものからの撤退や、コワーキングスペースの活用、あるいは本社機能を限定的に維持するといった選択も見られます。明確なのは、質の低いオフィスが選ばれる余地は、もはやほとんど残されていないという点です。
空間の価値を最大限に引き出す
このような環境のもとで、企業には一歩引いた視点から空間の本質を見つめ直すことが求められています。限られた投資からいかに価値を最大化するか——すなわち、空間をいかに「より機能させるか」が重要な問いとなっています。 大規模な移転や改修を前提としない場合であっても、ワークプレイスのあり方を定期的に見直し、テクノロジーを活用して在席状況や空間利用を可視化するなど、運用の効率化を図ることが重要です。 また、高仕様内装が不可避である場合には、設計や素材以外の領域でコスト最適化を図ることが求められます。たとえば、オフサイト建設やモジュール化、あるいは施工を前提とした設計(Design for Construction)といった新たな手法の検討が、その一助となり得ます。 さらに、グローバル企業にとっては、地域間のコスト比較を精緻に行い、各市場の特性を踏まえたポートフォリオ戦略を構築することが不可欠です。それぞれの地域が持つ強みを活かしながら内装投資を最適化することが、長期的な競争力を左右する要因となります。
今後3〜5年の間に、主要都市の多くで新たなオフィス供給が段階的に進むと見込まれています。こうした状況を背景に、多くのテナント企業が、実際の意思決定に先立ち、早い段階から「残るべきか、移るべきか」という問いに向き合い、その判断を模索しています。
しかし実際の選択肢は単純な二択ではなく、三つの方向性のあいだに開かれています。ひとつは、市場のピーク水準にある現在において、より高額な賃料を受け入れつつも、高品質な新規オフィスへ移転する選択です。 もうひとつは、既存オフィスにとどまり、改修投資を通じて長期的な利用価値を高める道です。そして三つ目は、すべての要件を満たしているわけではないとしても、現在のオフィスに留まりながら有利な条件を再交渉するという選択です。
以下に、意思決定のプロセスと重要な検討事項を概観します。

AI(人工知能)の影響は、もはや将来の可能性として語られるものではなく、すでに私たちの働き方や暮らし方を変えつつあり、その影響は今後さらに広がっていくと見込まれています。こうした流れのなかで、企業による不動産ポートフォリオの運用そのものが、AIによって再定義され始めています。 企業ごとに導入の成熟度には差があるものの、私たちは、AIの可能性を段階的に紐解きながら、その本質的な価値と、実装にあたって必要となる具体的な仕組みやプロセスの両面を理解する支援を行っています。
AIが引き出すプロジェクト実行の価値
一部の企業では、AIの活用を業務管理やバックオフィス機能に限定し、慎重な導入を進める動きも見られます。しかし、市場を牽引する先進的な企業は、この発想を反転させ、プロジェクト実行そのものの基盤にAIを組み込む方向へと舵を切っています。とりわけ大手テクノロジー企業はすでに先行して取り組んでおり、そこから得られた知見は他業種へと横展開されつつあります。 本来、AIはプロジェクト実行の効率性と品質に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。価値創出の最大化、スケジュールの短縮、リスクの早期特定と対応、そして高度なデータ分析を通じた意思決定支援——これらを同時に実現する基盤となり得ます。 AIの活用によって、内装プロジェクトに伴う不確実性は軽減され、投資に対する空間価値の引き出し方もより高度化していきます。そして最終的には、働く人が最大限に能力を発揮できる、次世代のオフィス環境の創出へとつながっていきます。
AIの統合が最も効果を発揮する領域
急速に進化する環境を的確に捉え、AIの利活用価値を最大化するために、ターナー&タウンゼントでは独自のデジタル成熟度評価モデルを策定しています。このフレームワークは、5つの段階からなる戦略プロセスを通じて、AI導入を加速させるうえで最も効果的なアプローチを明らかにし、企業の意思決定を支援するものです










