
サンフランシスコ
あらゆる仕様に広がる品質志向
北米市場では、共用設備・サービスを重視した空間づくりの流れが、主要都市のみならず二次市場にも広がっています。なかでもサンフランシスコでは、この傾向がより顕著に見られます。これは、同地域においてテクノロジー企業が経済の中核を担ってきた歴史的背景とも深く関係しています。
サンフランシスコにおける高仕様内装コストは、1平方フィートあたり532米ドルと、グローバルでも最上位に位置しています。この高コストの一因として、オフィス回帰に伴う内装需要の増加に加え、より高度で専門性の高い空間への需要拡大が挙げられます。特にテクノロジーやライフサイエンス分野におけるラボスペースなどは、従来の会議室やリフレッシュスペースに比べ、設計・施工ともに時間とコストを要する傾向があります。ここでいう「ラボ」は必ずしも密閉型の特殊空間を意味するものではありませんが、音響性能や専門機器など、追加的な要件が求められる点で共通しています。
こうした環境のなかで、内装は引き続き人材獲得の重要な手段となっています。シリコンバレーのテクノロジー文化に象徴されるように、金融やプロフェッショナルサービス企業もまた、優秀な人材の確保を目的に、オフィスの質を引き上げる動きを強めています。単なる職場ではなく、働く人にとって魅力的な空間──すなわち“もう一つの日常”としてのオフィスが求められており、ウェルビーイングへの配慮も重要な要素となっています。
この人材獲得競争は、すべての仕様レベルに影響を及ぼしています。最低限求められる品質水準そのものが引き上げられており、その結果、低仕様内装においてもコストは上昇しています。実際、サンフランシスコでは低仕様の内装コストが342米ドル/平方フィートと、世界でも3番目に高い水準に達しています。 さらに、既存オフィスにとどまりながら改修を行う場合には、業務を継続したまま工事を進める必要があり、これが工期の長期化やプロジェクトの複雑化を招く要因となっています。結果として、仕様にかかわらず追加的なコストが発生する構造が生まれています。